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2005.07.30

The Falcon's Malteser

The Falcon's Malteser (Diamond Brothers Mysteries)
The Falcon's Malteser

Tim Diamondという名前で私立探偵をしているHerbertは、お世辞にも探偵に向いているとは言えなかった。しかし、彼の弟Nickは兄よりもはるかに頭脳明晰だった。ある日、Diamond探偵事務所に男が訪ねてきて「この封筒を預かって欲しい。500ドル出す。」と言う。封筒を預かるだけで報酬が出るという、うまい話に喜ぶHerbert。しかし、この封筒が彼ら2人を大きな事件に巻き込むことになる…。

この物語の作者は、"Stormbreaker"を書いたAnthony Horowitzなのですが、その"Stormbreaker"同様、非常に簡潔な語り口で書かれています。物語の最初から、舞台背景や登場人物の紹介もそこそこに、いきなり事件が始まります。冗長な表現やエピソードなんかはほとんど無く、話がサクサク進むので、読んでいて非常に気持ちがいいです。

"Stormbreaker"の主人公Alexは、どちらかと言うと体力系、瞬時の判断力系な感じがするのに対し、"The Falcon's Malteser"の主人公Nickは、熟考、推理力系ですね。また、Alexは結構シリアスなのに対し、Nickは冗談や皮肉を言ったりするタイプで、キャラクター的には後者の方が好きです。また、彼の兄であるHerbertがまたいい味出してます。全然向いていないのに、本人は真剣に私立探偵をやっていると思っていて、完全に主人公Nickの引き立て役になってます。 "Case Closed"のRichard Mooreと同じような役回りですな。

いろんなところに伏線が張ってあったりして、ミステリ的な要素もちょっと含んでいますし、主人公の絶体絶命シーンも多数用意されていますので、娯楽小説として十分楽しめるようになっています。 "Stormbreaker"を読んで気に入ったという人なら、"Horowitz節"を堪能できる1冊だと思います。

評価:★★★★

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2005.07.27

英語多読完全ブックガイド

英語多読完全ブックガイド
英語多読完全ブックガイド

SSS英語学習法研究会による、多読に適したあらゆる洋書を網羅したガイドブックです。使用語彙が200~300語程度の簡単な本から、難易度の高いペーパーバックに至るまでをレベル別に紹介してあります。

…しかし、このボリュームは何なんでしょう!紹介してある洋書は約10,000冊。そのほとんど全てに、読みやすさレベル(YL)、総語数、紹介コメントが載っています。本のジャンルも、学習用のGraded Readersはもちろんのこと、シリーズ物や、絵本、ペーパーバック、挙句の果てにはMANGAの語数まで載っています!そして、お薦め度別に「超特選」「特選」「準特選」などとランクまでつけられています。これだけのデータをまとめるのには、SSS英語学習法研究会の多くのメンバーが膨大な時間を費やす必要があったに違いありません。こんな膨大なデータベースを、たった2,600円で手に入れることができるなんて、まさに驚異的です!あらためて執筆者の方々にお礼を言いたいと思います。

この本の素晴らしさは、PB300―ワケありのペーパーバック300選完全ガイドと比較するとよく分かると思います。「PB300」の方は、本の難易度や語数、ジャンルなどはお構いなしに、ただ300冊のペーパーバックが羅列されているだけです。なので、この「PB300」で紹介されている本を見て、「この本、面白そうだ」と思って(難易度や語数を意識せずに)その本を購入できる人は、すでに一般的なペーパーバックはすらすら読みこなせている人に限られます(そうでなければ、必ず挫折するのは目に見えている)。でも、そういう人って、きっと相当数のペーパーバックを既に読み終えており、自分の好きな作家やジャンルが分かっていて、ある程度自分で本を選べるような人だと思います。ですが、そのような人に今更「ペーパーバックのガイド」が必要かどうかは疑問です。こういうことを考えると「PB300」の対象読者って、どんな人なんでしょうか…?
一方で、「英語多読完全ブックガイド」が対象としている読者は非常に明確で「英語が苦手だと思っているけど、何とか多読で英語力を伸ばしたいと思っている人」です。そういう人が自分に合った本を選びやすいように、レベルや語数、ジャンルやお薦め度がきめ細かに記載されています。もちろん、語数が数十万語を超えるような難易度の高いペーパーバックも紹介されていますので、英語上級者でも十分役に立つようになっていると思います。

これら2つのガイドブックの決定的な違いは、両者の「視点」にあると思っています。「PB300」の方が「こんな本が売れ筋ですよ!是非買ってください!」という出版社側の視点で執筆されているのに対し、「英語多読完全ブックガイド」の方は、「こんな本を読んだけど、すごく面白かったから読んでみてよ!」という読者側の視点で書かれています(実際に本を読んだ読者の感想も多数掲載されています)。なので、後者の方が読者の共感を得られやすいと思います。

とりあえず、しばらくは「英語多読完全ブックガイド」片手にAmazonに入り浸る日々が続くと思います。この本には「めざせ!1000万語」と書いてありますが、このブックガイドがあれば、1000万語なんてあっという間……かな?(汗)

最後に、感想を一言述べて締めくくりとさせて頂きます。

英語力を向上させたいと思っている人は、絶対買うべし!!!

評価:★★★★★★★

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2005.07.25

Flowers for Algernon

Flowers for Algernon
Flowers for Algernon

知的障害を持つ主人公のCharlie Gordonは、常々「もし、賢くなれたらどんなに素晴らしいだろう」と思っていた。そして、ある日「頭を良くする手術」を受ける。その後、短期間であらゆるものを理解し、吸収していき、天才の域に達する。しかし、賢くはなったものの、Charlieを取り巻く状況は、彼が手術前に想像していた素晴らしいものではなかった。そして、同じ手術を先に受けて、賢くなっていたネズミのAlgernonに変化が現れ始める…。

物語は、主人公Charlieの手記(手術の経過レポート)という形式で表現されているのですが、最初のうちは文法も滅茶苦茶で誤字だらけです。ですが、次第に表現が正確で高尚になっていくことで、Charlieが賢くなっていくということを表現しているのが面白いですね。こういう「小説ならではの表現方法」って結構好きです。

Charlieが賢くなってからは、うまくいかない人間関係や、知らない方が幸せだったようなことを知ってしまったことなどで、幸せとはほど遠い苦悩の日々が続くのですが、それが手記というかたちで非常にリアルに表現されています。特に、物語の後半の方には悲壮な感じになってきます。結末にはおそらく賛否両論はあると思いますが、僕は「希望のある結末」と解釈して、結構いい終わり方だと思っています。

この物語は1959年に執筆されたらしいのですが、ほぼ半世紀経った今でも非常に新鮮な輝きを放っています。まさに、世代を超えて親しまれるヒューマンドラマの傑作だと思います。

残念ながら読書スピードがそんなに速くないので、読破するのに2週間もかかってしまいましたが、こういう本が1週間くらいでサクサク読めるようになりたいなぁ、と思います。

評価:★★★★

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2005.07.24

PB300―ワケありのペーパーバック300選完全ガイド

PB300―ワケありのペーパーバック300選完全ガイド
PB300―ワケありのペーパーバック300選完全ガイド

最近、読む本を選ぶのにちょっと悩むようになってきたので、海外の作家さんについて知ることにより、自分の読書の幅を広げられればいいなぁと思い、買ってみました。

「どこから読んでもハズレ無しの巨匠」として、シドニィ・シェルダン等20人の作家と、「知る人ぞ知るいちおし作家」として10人の作家が紹介されています。そして、ペーパーバック300冊の紹介があります。

「ペーパーバック300冊」については、ただ300冊の紹介が羅列されているだけなので、利便性はあまり良くありません。例えば、総語数でソートしてあったり、ミステリ、SF、ノンフィクションのようなジャンル別などでまとめてあれば、少しは使い勝手が良くなったと思うのですが…。

あと、いろんな人へのペーパーバックに関するインタビューが載っているのですが、それらの人々の言葉の端々には、何か「洋書をたくさん買って欲しいなぁ」という洋版の思惑がプンプンです。例えば「ペーパーバック?捨てるほど読みますよ」という養老孟司氏の言葉の裏には、洋版の「捨てる程ゴンゴン買え買え」という声が聞こえてくるような気がしますし、タワーブックス渋谷店バイヤーの武藤理恵氏の「自分の直感を信じて、たまには「ジャケ買い」も」という言葉の裏には、「内容なんか気にせずに表紙に騙されてゴンゴン買え買え」というメッセージがあるような気がしてなりません。どうも「And Then There Were None事件」以来、洋版は「本を売るために姑息な策略」を弄しているような気がするのですが、気のせいでしょうか…。なんとなく、この「ペーパーバック300冊」の中にもどーしよーもなくつまらないので、全く売れない本をわざと混ぜているに違いないと想像してしまうのは考えすぎでしょうか。

(洋版さんへ。もし、この本を出版した理由が「読者を騙して洋書をゴンゴン買わせる」というのではなく「ただ純粋に、読者に素晴らしい洋書との出会いを提供したい」というものであれば、それを証明するのは簡単です。洋版さんのWebサイトでも、カタログでもどこでもいいので「紹介した洋書を所蔵している全国の図書館リスト」を作成して掲載して頂けるだけで結構です。)

ただ、上記のようなことを認識した上で、作家や洋書のカタログとして見れば、それなりに価値はあると思います。が、個人的にはこの本よりも英語多読完全ブックガイドの方に期待しています。レベル別多読図書リストがあるそうなので、自分にあった洋書がより簡単に見つけられるのではないでしょうか。

評価:★★★

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2005.07.11

Tell Me Your Dreams

Tell Me Your Dreams
Tell Me Your Dreams

毎晩のように誰かに追われる悪夢を見るAshley。快活で歌の上手なToni。そして控え目で芸術的才能に秀でたAlette。3人の周りで次々に起こる不可解な猟奇的連続殺人事件。そして容疑者が逮捕され、全米を揺るがす裁判が始まる。3人の関係とは?そして隠された真実が明らかになる…。

サイコサスペンスとして、なかなか面白い題材を扱っている作品だと思います。第1部と第2部は非常に楽しんで読むことができました。特に、第2部は法廷での裁判のシーンがメインなのですが、被告側弁護人の「こんな裁判絶対勝てるわけねぇよ」みたいな八方ふさがり感がなかなか面白かったです。法廷ものとしては、第一人者であるJohn Grishamの作品をGraded Readersでいくつか読んだのですが、あまりグッとくるものがなかったのでちょっと敬遠していたところがありましたが、この作品は楽しめました。意味もなく"Objection!"とか叫んでみたくなりますね。

で、第3部で事件の真相が明らかになるのですが、その真相がちょっと物足りないような気がしました。もう一ひねり、サプライズが用意してあれば星1つプラスしたと思います。

ところで、夢と言えば、僕は結構「間に合わない夢」というのをよく見ます。よく「乗り物に乗り遅れる夢」を見るという話はありますが、僕の場合は…例えば、1時間後に離陸する飛行機に乗らなければならないけど、まだ空港へ向かう電車に乗っていて、空港に到着するにはあと1時間半かかるという感じの夢です。つまり、実際に電車や飛行機が目の前で行ってしまうシーンは目撃していないけど、もう乗り遅れてしまうことが確定している。だけど必死に現地へ向かおうとしているという感じです。何でこんな夢をよく見るのか理由を知りたい気もするのですが、あまりに救いようのない夢なので、それが意味するところは知らないほうがいいのかもしれませんね。

評価:★★★

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2005.07.10

東京国際ブックフェア2005

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暑い中、東京国際ブックフェアに行ってきました。

本来の目的は多読用の洋書をいろいろ買ってくるということでしたが、いろんなところをウロウロしている間に時間が過ぎていってしまいました。作家の室井佑月さんのトークショーなども見てきました。室井さんが言うところの「こんな男はイヤ」というポイントに、自分に結構ビシビシ当てはまってしまうところが多かったのがなかなかにショックでした(笑)。その他では、ドイツブースで、浦和レッズのギド・ブッフバルト監督を見ることができました。

洋書バーゲンコーナーには、ものすごく多くの人がいました。日本にも洋書を求める人はたくさんいるんだなー、とあらためて感じました。ペーパーバックもたくさん売っていたのですが、僕はまだどんなペーパーバックでもスラスラ読めるというわけではないので、とりあえず無難なところでハリーポッター2巻を購入しました。

ところで、招待状には「会場内でのカメラ・ビデオ等による撮影は固くお断りいたします」という記述があったのですが、あちこちでデジカメや携帯電話で写真撮りまくりでした。有名人のトークショーや、キャラクターの着ぐるみ、キャンギャルのお姉ちゃんなど、あらゆるところで写真が撮られていたので、撮影は固くお断りしているのは一体どこの誰だとツッコミたくなりました。

あまり時間がなかったので、そんなに多くのブースは見られませんでしたが、とりあえず両足がくたびれるくらいウロウロしてから帰宅の途についたのでした。

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2005.07.01

Hunters Of The Dusk

Hunters Of The Dusk (Cirque Du Freak
Hunters Of The Dusk

Darren ShanとMr. Crepsley、そしてHarkatはヴァンパイア一族の運命を背負ってVampaneze Lordを探す旅に出る。彼らが行く先に待ち受けるものは一体…。

ダレン・シャンシリーズ第7巻です。この本も第4巻のように、後へ続く話の序章という位置づけになっていますので、正直、ちょっと盛り上がりにかけるところはあります。新しい登場人物の描写したり、後にきいてくるであろう伏線を張ったりしなくてはならないので、仕方のない部分もあるとは思いますが、個人的には、1冊で起承転結をちゃんと最後まで見せてくれるような構成の方が好きです。

ストーリー展開についてはちょっと不満はありますが、出演キャラクターは相変わらず個性的で魅力的です。今回も主要な「新キャラ」が2名登場しますが、どちらもなかなかにワイルドで、今までにいなかったタイプなので、インパクトが強くていいです。

ところで、この本の邦訳版の紹介文を見てみると、「元帥(原書ではPrince)」とか「大王(原書ではLord)」だとか、とても原書のイメージからは想像もできない翻訳がされているような気がします。百歩譲って「元帥」は許すとしても、「大王」ってのはどうよ。僕が「大王」という言葉を見たときは、この人の名前しか思い浮かびませんでした。

評価:★★★

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