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2006.07.23

オシムの言葉

洋書
オシムの言葉

珍しく和書の紹介です。つい先日、サッカー日本代表監督に就任したイビツァ・オシム氏について語った本です。日本サッカー協会会長の川淵キャプテンが読んで感動し、オシム氏への代表監督就任を依頼したという話もあり、最近はサッカー関係者(特に日本代表を目指すサッカー選手達)の間で、必読書となっているようです。

オシム氏の半生には、戦争や民族間の争いに翻弄されたというところもあり、彼を語る上では非常に重要な要素であるとは思うのですが、話が長くなるので、ここはオシムの監督像についてだけ感想を述べようと思います。(ユーゴ紛争に翻弄されるフットボーラー達の姿については、この本よりも前作「悪者見参」の方に詳しく、そして生々しく描写されています)

で、いろんな選手の意見に出てきますが、オシム氏は「先を読む力」が凄いですよね。「夢ばかり見て後で現実に打ちのめされるより、現実を見据え、現実を徐々に良くしていくことを考えるべきだろう」という台詞が、2005年3月の日経新聞に掲載されたということなのですが、これってまさにドイツワールドカップ前のマスコミの盛り上げっぷりと、その後の絶望感をまるで予言していたかのような台詞ですよね。本人にしてみれば、論理的に考えたら、当然の帰結なのかもしれませんが…。

オシム氏がどんな人かという意見については、僕は「オシムは監督をやっているんじゃなくて、監督という生き物」と述べている通訳の間瀬氏の意見に賛成です。つまり「根っからの指導者」という感じですね。相手が誰であろうと、おかしい事を言ったと思ったら、それを正して気づかせなくてはすまないようです。例えば、ファンが「優勝してください」と言ったら、「どうして優勝できると思うんだ?補強もしてないのに」と問い返す。新聞記者が試合後の記者会見で「あのプレーは練習でやっていたんですか?」と聞くと「知らないはずはないだろう。君は3日前の練習で見ていただろうが!」と一喝される。挙句の果てには、スポンサーが「今日は絶対勝って下さい」と言うと「そんなに勝ちたいんだったら、レアルのスポンサーをやったらいいでしょう」なんて、並の監督が口にしたらクビが飛ぶようなこともずけずけと言ってのけます。彼と会話をするときは、誰であっても背筋を伸ばして極めてロジカルに考えながら言葉を発するよう努力した方がよさそうですね。彼の教育対象は指導者、スポンサー、サポーター、ホームタウンの人達なども含んでおり、選手だけを成長させようと考えているのではなさそうです。

オシム氏は前任者のように「ブラジルは世界最強なので、日本もブラジルの真似をすればブラジルのようになれる」という単純な考えではなく、日本人の長所短所を良く知っており、日本人に合ったやり方でやるみたいなので、非常に期待しています。先日引退を表明した中田英寿氏に「日本代表であんなに素晴らしいサッカーができるんだったら、引退なんかしなきゃよかった」と言わしめるくらいの素晴らしいサッカーが見られたら最高ですよね。

評価:★★★★★

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