Born on a Blue Day
Born on a Blue Day
(72,000語 YL:6.5)
アスペルガー症候群の一種であるサヴァン症候群(Savant Syndrome)を持つDaniel Tammet氏が自分の人生を綴った作品です。彼はその症状ゆえに、他人とのコミュニケーションなどに難があったりするのですが、一方で類希なる記憶力や、数学や語学において卓越した能力を持っています。例えば、2の64乗を1分以内に計算したり、円周率を22,500桁以上も覚えたりします。彼にとっては数字には「楽しい」や「背が高い」などの個性や色があったりするそうです。
彼の見ている「数字の世界」は、我々の感覚とはかなり違っているみたいで、とても興味深いですね。例えば、彼は具体的な数字であれば、どんな難しい計算であっても瞬時に解けるのですが、数字を抽象的な文字に置き換えた代数は全く苦手だったそうです。このあたりは、単なる「数学が得意な人」とは違いますよね。
また彼は、彼の持っている「数字や言語をビジュアライズする能力」というのは、多かれ少なかれ誰もが共通で持っているのではないかと言っています。例えば、「キキ」という意味の無い言葉であっても、なんだかトゲトゲしいイメージがあるのに対し、「ぼうば」という言葉の方は、何だか丸くて柔らかいイメージがするというような感じです。彼の視点から見ると、我々の世界についても新しい発見もあり、「なるほどねぇ」と唸らされるところも多いです。
また本書では、彼の特殊な能力のみについて述べているのではなく、彼が経験した困難や、困難を少しずつ乗り越えていく過程も描いています。幼少時代のこと、リトアニアでの単身ボランティア生活、パートナーとの出会い、円周率の暗記やアイスランド語習得への挑戦など、トピックもバラエティーに富んでいます。1人の内気な青年が勇気を出して世界へ飛び出し、友情や愛情、そして自分自身を発見する成長物語として、とても読み応えのある作品です。
文章もとてもロジカルに構成されているように見えます。時々、医学的もしくは数学的な専門用語がある以外は、とても平易で読みやすいです。「友情とは蝶々のようなものだ。美しいけれど、無理矢理つかまえようとするとすぐにつぶれてしまう」という一文が、とても印象に残りました。
評価:★★★★★
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