12年目の真実 マイアミの奇跡を演出した男
アトランタ五輪サッカー日本代表キャプテン前園真聖の選手生活を綴ったドキュメンタリーです。
彼はオリンピックでブラジルを破り、「マイアミの奇跡」を演出したのですが、その後スペインへの移籍が失敗し、高額でヴェルディに移籍した後、国内外のチームを転々とします。そして将来を嘱望された選手は、後に「オリンピックの頃がピークだった」と言われるようになります。
所属チーム、横浜フリューゲルスを離れたことが、彼の転落の始まりであったことは、誰もが認めるところだと思うのですが、そこでの一番の過ちは、「自分の市場価値を適切に評価できなかった」ことと「移籍できなかった理由を他人に求めた」ということにあったと思います。
スペインのチームからオファーがあった時、フリューゲルスが満額の移籍金(3.5億円)を要求したため破談になり、チームに不信感を抱いた前園はヴェルディへ移籍します。ですが、ここで「チームの連中が俺をディスカウントしなかったから破談になった。あいつらのせいだ」と言わずに、「3.5億円で買ってもらえなかったのは、まだ自分にそれだけの値打ちが無いからだ。頑張って10億でも欲しいと言われる選手になってやる」と言って与えられた場所でアピールするべきであったように思います。決して強くはないベルマーレに所属していた中田英寿は、ワールドカップを思いっきりアピールの場として活用し、自分の価値を世界に示してからイタリアへ渡りました。中田と比較してみると、やはり前園の場合は「自分の市場価値を上げること」と「さらに上を目指すために環境を変えること」の順序が逆だったように思えてなりません。って、過去に起こったことを部外者が論評するのは簡単ですけどね…。
著者の戸塚さんの文章は、Number誌でも時々読んだことがあって、読みやすいとは思うのですが、ちょっとスラスラし過ぎている感があるので、もう少し刺激があってもよいと思います。金子達仁氏や木村元彦氏ほどの毒はなくていいですけど(笑)。どうでもいいけどこの二人を同列に並べたら、双方から怒られそう。「アイツと一緒にするな」って(笑)。
評価:★★★
最近のコメント