ビヨンド・エジソン―12人の博士が見つめる未来
12人の卓越した業績を誇る科学者の人生や取り組みを綴ったノンフィクションです。
それぞれの研究分野は医療や気象、生物学や情報工学など多岐にわたります。彼らに対して、筆者が「人生に影響を与えた一冊の伝記」を挙げてもらい、それを切り口に研究者達の独創的なアイディアやモチベーションの源を探ろうというアプローチも非常にユニークで面白いです。選ばれる伝記は、やはりキュリー夫人などの研究者のものが多いのですが、中には芸術家モーツァルトを挙げる人もおり、意外性があっていいですね。
それぞれの研究者に共通して言えそうなことは、研究でブレイクスルーがある時には、そこには「他の研究者との出会い」が非常に大きな影響を与えることが大きそうだということです。そういう研究者に出会えるかどうかは、運にも大きく左右されることが多いのかもしれません。でも、この本に出てくる人々は、問題に対して常に真摯に取り組み、そのような「運」がめぐってきた時に、それを逃さずに掴み取る準備がしっかりとできていた人達のように思います。
個人的には、我々の住む社会が、こういう人類の英知を1歩でも2歩でも進めようとする人達を応援できる社会であってほしいなあ、と思います。それこそ考古学や宇宙開発といった分野は、医療や情報工学ほど我々の生活に密着しているわけではありません。「役に立たない研究だ」とばっさり切り捨ててしまうことはとても簡単だと思います。でも「現在の自分達に役に立つこと」以外のベクトルについて、未知の現象や謎を解き明かすことをやめてしまったら、そのような社会は「役に立つこと」の解を見つけるのも難しい社会になるのではないかと思います。一人の人間だって「あの時にやっていたことは一見無駄のように思えたけど、それが今になって大きな意味を持ってきた」という経験をしたりすることもあるのですから。
評価:★★★★
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