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2010.07.21

オシム勝つ日本


オシム勝つ日本

ワールドカップ開催前に、オシム氏がサッカーの様々な面について述べたインタビューです。

話題は日本代表やJリーグ、ビジネスとしてのサッカーや監督の仕事など多岐にわたります。そのいずれについても、現実を冷静な視点で分析しています。その知識と分析そして提言には非常に感心するところが多いです。

その的確な分析は、時として予言のような驚きを感じさせます。例えば、2010年のワールドカップにおいて「今大会で可能性を秘めるのは、チリやパラグアイなどの南米勢や、コートジボワールやガーナなどのアフリカ勢だ。」と述べていますが、このうちコートジボワールを除く3チームは現にグループリーグを突破しています。さらにガーナとパラグアイはベスト8まで進んでいます。

また、名古屋グランパスのストイコビッチ監督については、「変化を起こすためには、人と違った考え方をしなければならない。そして選手の背中を思い切って押さなければならない。その点で彼には勇気があったし、自分自身の確固とした考え・信念があった。」と評しています。この論評からは、つい先日、ブラジルから帰国したばかりで、コンディション的にも精神的にも難しい状態にあった闘莉王を無理矢理試合にフル出場させた時のことを思い起こさせます。相当なリスクを負った起用であり、まさに信念がなければできない決断ですね。

上記以外にもオシム氏の言葉にはすごく重みがあるものがたくさんあり、読みごたえがあります。ただ、文章の構成という観点からすると、冗長な部分や重複する部分もいくつかあり、オシム氏が語ったそのままを記載しているような印象を受けます。ですが、読者のためを考えたら、もう少し内容を編集して、すっきりと読みやすい構成にしてもよかったのではないかと思います。何となく、著者はオシム氏の言葉をありのままに伝えようとするあまり、誤解を生みかねない編集を極力控えているような気がします。監督の言うことには忠実だけど、リスクを恐れて思い切ったプレーができないサッカー選手の姿と著者の姿が何となくだぶって見えてしまうのは、気のせいでしょうか。

評価:★★★★

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