The Art of Racing in the Rain
The Art of Racing in the Rain
(63,000語 YL:6.0)
僕はEnzo。幼いときからDannyに飼われて、それからDannyとずっと一緒にいる犬だ。Dannyは最高のレーサーで、いつも僕のヒーロー。でも僕もかなり年を取ってしまった。そろそろDannyともお別れかもしれない。でも来世では、きっと人間に生まれ変わって、必ずDannyに会いに来るよ…。
セミプロレーサーDannyの人生を、飼い犬のEnzoの視点から綴ったヒューマンドラマです。でも「飼い犬」なんて言ったらEnzoに怒られるかもしれません。DannyとEnzoは、大親友で、最高のパートナーですから。
楽しいときも苦しいときも、DannyとEnzoはいつも一緒ですが、Dannyはかなり苦しい人生を強いられます。最愛の妻と死別し、愛娘とは引き離され、ぬれぎぬの罪を着せられ、仕事まで奪われます。そんな中でも耐えに耐えて頑張りぬくDannyの姿には頭が下がります。しかし、どうしようもなく追い詰められ、あきらめかけたその時に、Enzoが犬にできる方法で彼を助けます。そのシーンが何とも可笑しくて、しかも感動的で、何とも言い表せません。
また、人生をカーレースになぞらえて、それが犬のEnzoの口から語られるのも面白いですね。
「レースの最初のコーナーで勝負は決まらない。しかし、最初のコーナーでレースが終わる(リタイヤする)ことはある」
「自分の目が見ている方向に自分は進む」
「タイヤが駄目なら、他が全て良くても意味が無い」
人生もカーレースのように、しっかりとハンドルを握って、周りの状況を見極め、適切な時に適切な対処をすることが必要なことをEnzoが教えてくれます。
基本的に辛い人生のシーンが多い作品ですが、Enzoの愛嬌とユーモアもたくさん散りばめられています。「犬は来世で人間になれる」とか「犬は猿よりも人間に近い」など、彼の理論も独特で面白いです。読後感も非常にさわやかです。犬好きなら、涙無くして読めない一冊ですね。おススメ。
評価:★★★★★
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