僕がバナナを売って算数ドリルをつくるワケ
自分は名古屋グランパスファンでありますが、しばしば等々力競技場へ川崎フロンターレの試合を観戦に行きます。そこでいつも感心させられるのが、満員のサポーターとアットホームな雰囲気です。かつてのJ2時代には、観客席がガラガラのスタジアムで試合をしていたこのチームが、どうしてこのような発展を遂げたのでしょうか。いつも疑問に思っていました。
フロンターレを育てることに尽力している一人の人物が書いたこの本は、その疑問に対する回答を示してくれます。著者の天野氏は米国でスポーツビジネスを学び、その後フロンターレに入社して、様々なアイディアと行動力で、フロンターレをプロモーションしていきます。小学生の算数ドリル、バナナ、銭湯、絵本の読み聞かせ…。およそサッカーとは関係の無いようなものばかりです。「一営利企業による単なるタイアップ宣伝行為ばかりじゃないか」という見方をする人もいるかもしれませんが、満員のスタジアムで、選手と一緒に喜んだり泣いたりするサポーターの姿を見ると、彼が頭をひねったり、汗を流した結果が、「スポーツで人の生活を豊かにする」というクラブの理念の実現に繋がっていると思います。
もちろん、フロンターレの発展は彼一人に起因するものではないですし、サッカーの魅力は試合がメインです。でも、その魅力を多くの人に知ってもらい、お金を払って何度もスタジアムに足を運ぶようにしてもらうためには、ピッチの内外での継続的な努力が欠かせないということを、あらためて思い知らされます。
この本を読んで思い出した本が一冊あります。大分トリニータの栄光と転落を描いたノンフィクション「社長・溝畑宏の天国と地獄」です。
人口や経済状況等が全く異なる大分と川崎、そしてチームの社長である溝畑氏と一部門の部長である天野氏を一概に比較することはできませんが、大分は地元やマスコミなどが、クラブのことをまるで「他人事」のように扱っていて、地元に浸透していないという印象を受けました。でも、フロンターレもかつては注目されないJ2の弱小チームでした。大分トリニータもありとあらゆる手段を使って地元に深く深く根付く努力を惜しまなければ、いつかは芽が出てJ1に帰り咲く日が来るのではないかと思います。
「僕がバナナを売って算数ドリルをつくるワケ」と「社長・溝畑宏の天国と地獄」の2冊は、セットで読むことをお勧めします。スポーツノンフィクションとしてもビジネス書として読んでも、いろんな発見が得られる良書です。
評価:★★★★
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