Steve Jobs
Steve Jobs
(220,000語 YL:8.0)
言わずと知れた2011年の大ベストセラー、Steve Jobsの公認の伝記です。
多くの人のインタビューなどを通して、Jobsという人間を克明に描いています。生い立ちから始まり、Apple IIやMacなどのPC黎明期から、iPadに至るまでの彼の激動の人生をとても詳細に述べていて、非常に読み応えがあります。
神のように崇められる才能を持ち、悪魔のように冷酷。Reality distortion fieldで実現不可能と思われることを可能にする一方、自分に都合の悪い情報は全てシャットダウン。完璧主義で「最高のもの」以外は全て「最低」判断するセンス。全てが極端なJobsですが、そんな彼を側から支え、バランスを取っていた妻Laureneの役割は、彼の人生において非常に大きかったのではないかと思います。
そして、Jobsの人生の物語を面白くしているのは、やっぱりもう一人の天才、Bill Gatesの存在でしょうね。時にライバルであり、友人であり、才能を認める相手であり、こき下ろす対象であり…、2人の関係は複雑でとても一言で言い表せるものではありません。PCのOS市場では圧倒的にAppleを凌駕しているMicrosoftですが、JobsがMacやiPod、iTunes Storeなど様々な「マジック」を披露する度に、驚きを隠せないGatesの姿もまた印象的です。
Jobsの才能は様々に語られていますが、やはり一番大きいのは「最高の製品やサービスを送り出したい」という情熱だと思います。そのためには他人にも無理な要求をして真っ向から対立するし、長い時間検討してきたことを全て破棄してゼロからやり直すことも厭いません。それくらいのことをしないと世界が変えられないと知っていたこと、そして恐れずにそれを行動に移せることが、彼の最大の武器だったのではないかと思います。空気を読んで、対立を避け、波風を立てないように生きている人から見ると、彼の姿はとても鮮烈で眩しく見えてしまうことでしょう。
残念ながらJobsは亡くなってしまいましたが、「永続的な会社を作る」というのも彼の目標の1つでした。AppleがIBMのように100年続く会社になればよいですが、Jobs亡き後、一気に坂道を転げ落ちて、会社が潰れたり、他の会社に買収されたりすることが無いとも言い切れません。そういう意味では、Jobsの「挑戦」はまだ続いていると言ってもいいのかもしれません。
自分が毎日使っているiPodの隅々にも、Jobsの情熱と魂が宿っていると知った時、それが今までよりも美しく見えてしまうような気がします。
評価:★★★★★
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