IBM 奇跡の“ワトソン”プロジェクト: 人工知能はクイズ王の夢をみる
IBM 奇跡の“ワトソン”プロジェクト: 人工知能はクイズ王の夢をみる
IBMのコンピュータWatsonが米国のクイズ番組"Jeopardy!"で人間のクイズチャンピオンを破る過程を描いたドキュメンタリーです。
Watsonが勝った今だからこそ「無尽蔵の情報を詰め込める機械が人間に勝つのは当然だ」などと言う人もいるかもしれませんが、Watson陣営は最後の最後まで勝利の確信は無かったのではないかと思います。「クイズ番組で人間に勝つマシンを創る」といのは、それだけ途方もなく難しく、失敗のリスクも非常に高い危険なプロジェクトであったと思います。しかし、会社の売り上げには直接的にはほとんど貢献しないようなそのプロジェクトに、多大な資金と有能な研究員をつぎ込むという、IBMのスケールに圧倒されます。
Watson陣営は、あらゆる方向からWatsonの機能の向上に努めます。問題の答えをいかに素早く発見するかという基本的な課題の他にも、問題の選択方法や掛け金のストラテジー、さらにはWatsonが放送禁止用語を発しないようにすることなど、解決すべき課題は無数にあります。逆に言うと、人間のクイズプレーヤーは、これらの作業を一瞬でやってのけているわけで、それもすごい能力であると思います。
著者も述べていますが、Watsonが勝利したのは、運も味方した部分があると思います。別の問題が出ていたら、勝負は紙一重だったかもしれません。ですが、多くの研究者の英知を集結し、極限までWatsonを鍛え上げたWatsonチームに、クイズの神様がちょっとだけ味方をしてくれたのかもしれないと思います。
人間vs.機械という構図で語ることなく、対戦者や開発者のみならず、Watsonをとりまくあらゆる人達の努力を描いた力作です。精密なドキュメンタリーであると同時に、良質のヒューマンドラマであると思います。
評価:★★★★★
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