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2012.07.03

争うは本意ならねど


争うは本意ならねど

Jリーグからドーピング規定違反という裁定を下されながらも、自身の潔白を証明するために戦った我那覇選手と、彼の戦いを支えた人達の物語です。

Jリーグの各チームのドクター達は、後藤ドクターが我那覇選手に行った点滴が、ドーピング行為に当たらないことを主張し、戦います。「医師達が自分たちの権力や地位のために戦っている」と揶揄する人もいましたが、彼らの考えはただただ「正しい治療によって選手を守りたい」というプレイヤーズファーストの精神、そして「無実の選手が罰せられるのは間違っている」というフェアプレーの精神でした。そのために多くの時間や莫大な費用を費やした彼らの努力には本当に頭が下がります。

一方でドーピングコントロール委員会の青木委員長をはじめとするJリーグ側の人達の考えは「マスコミが騒いだからあとには引けない」「騒ぎを大きくするな」「もう終わったことだから、過去のことは変えない」などと言った保身や事なかれ主義に満ちていました。彼らに少しでも「プレイヤーズファースト」の精神があったら、体調不良で苦しむ選手に現場の判断で治療ができなくなるようなローカルルールの策定などはしなかったのではないかと思います。

あらゆる情報源から情報を収集し、事件の真相を徹底的に追及するという、著者の木村氏の取材力にはいつもながら本当に驚かされます。ただ、事件の中心人物である青木委員長がインタビューを受諾しなかったのは本当に残念だったでしょうね。木村氏の考えでは、青木委員長が我那覇選手を誤った規定によって「故意に」ドーピング違反と裁定した疑惑が残っているので。

ドクター達や選手会、サポーター、沖縄の人達など、多くの人が我那覇選手を助けるために立ち上がりますが、そこにはやはり我那覇選手の人柄に対する絶対的な信頼がありますね。彼だから多くの人が支えてくれたのだと思います。

我那覇選手がCAS(スポーツ仲裁裁判所)の聴聞会で行ったスピーチを読んだ時は、思わず体が震えました。

"I devoted my whole life to football and I have never done anything to betray it."

サッカーに全てを捧げ、それを裏切るようなことは絶対にしなかった我那覇選手。そんな我那覇選手がJリーグから糾弾され、サッカーに裏切られそうになった時、多くの人が救いの手を差し伸べたのは必然だったのかもしれません。

サッカーを愛する全ての人に読んで欲しい一冊です。

評価:★★★★★

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