「日本人と英語」の社会学 -- なぜ英語教育論は誤解だらけなのか
「日本人は英語が下手」とか「英語ができると収入が増える」等の一般的な説が本当かどうかをデータに基づいて検証した本です。どんなデータをどのように分析したのかが非常に詳細に書かれていますが、各章の最後に「まとめ」として分析結果のサマリが書かれているので、まずここを読んで、興味のあるところだけじっくり読んでみても、かなりの情報が得られると思います。
自分が興味を持った分析結果は以下のような部分です。
- 「日本人は英語が下手か?」→「国際的に低いレベルにあるというのは本当だけど、突出しているわけではなく、東アジアや南欧と同レベル」
やっぱり、データから見ても「実は日本人は世界的に見ても英語が得意だった!」とは言えないようです…。
- 「女性は英語好きか?」→「男女間で学習意欲の強さの違いは見いだせない。しかし、高学歴者男性は仕事等の実益のために英語を勉強し、同女性は趣味のために勉強する傾向がある」
男性は「必要だから」英語を勉強し、女性は「面白いから」英語を勉強するという傾向があるとすると、あるカテゴリの層に関して言えば、「男性よりも女性の方が比較的英語好き」と言えなくもないという感じでしょうか。
- 「英語ができると収入アップ?」→「英語ができない層と、英語で仕事ができる層では、収入に数百万円の差がある。しかし、この相関関係が他の要素(学歴等)の影響である可能性は否定できない」
英語ができる人は、他の勉強もできる可能性が高くて、良い大学や優良企業に入れて、結果的に収入に差が出るという可能性はありますよね。
いわゆる通説がどの程度本当なのかをデータに基づいて議論することにより、様々な発見があって非常に面白いです。やみくもな商業主義的英語礼賛でもなく、感情的な英語不要論でもなく、「英語教育をより良いものにしていくために、今我々が置かれている状況を、しっかりと客観的に認識しましょう」という姿勢にはすごく好感が持てます。
全ての英語教育に携わる人に読んでほしい本です。
評価:★★★★
| 固定リンク
コメント