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2016.02.23

Wonder


Wonder
(73,053語 YL:5.5)

病気で生まれつき醜いAugustは学校に行かずに自宅で勉強していたが、5年生として初めて学校に行くことになった。周囲から驚かれ、疎まれる中で、少しずつ友達もできてきた。しかし親友だと思っていたJackに陰口を言われているのを聞いてしまし、Augustは大きなショックを受けてしまう…。

先天的に醜い一人の少年の学校生活を描いた物語です。容姿だとか、他人にどう思われているだとか、友達が多いとか人気があるだとか、そういうことに非常に敏感な10代前半の子供達の様子をよく描いています。どうしても目立ってしまうAugustの存在は、周囲の子供達にもいろんな感情を引き起こします。「Augustは付き合ってみるとなかなか面白い奴」ということを見抜けた子供達は、だんだんと彼の友達になっていきます。ありきたりではありますが、人を見た目で判断せずに、その人の行動とか気持ちとかに目を向けることの大切さを教えてくれます。

評価:★★★

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2016.02.14

Digital Fortress


Digital Fortress
(100,756語 YL:7.0)

米国の諜報機関National Security Agency(NSA)はTankadoという男から脅迫を受けていた。NSAとそれが持つ秘密の暗号解読用スーパーコンピューターCryptoの存在を世に公にしなければ、「絶対解読不可能な暗号アルゴリズム」をばら撒いてCryptoを無力化してやると。そのアルゴリズムの謎を解くために休日に突如呼び出された暗号エンジニアのSusan。そして暗号を解くためのパスワードを手に入れるためにスペインへと渡ったSusanの婚約者David。しかし、Tankadoが心臓麻痺で急死したことにより、自体は世界中を揺るがす大事件へと発展していく…。

米国諜報機関における、暗号をめぐるサイバー戦争を描いた作品です。様々な登場人物の思惑が複雑に交錯して進んでいくストーリーが見事ですね。主人公のSusanは目の前の事態にオロオロしてばっかりで、あまり事件の解決に役に立っているようには見えないのですが、「天才暗号家」というよりは、読者の分身としてストーリーに入り込んでいるという立場に見えますね。ちなみに作者は「ダ・ヴィンチ・コード」のダン・ブラウンさんです。この人、暗号ネタ好きなんですかね。最後の最後まで「隠された暗号の秘密」への攻防が続きます。問題は難しくても、答えは非常にシンプルというところも、きれいにまとまっていていいですね。

英語は大人向け小説としては割と平易な部類に入ると思います。日本語の部分でちょっとおかしい間違いがあるのはご愛敬(幸運を呼ぶ7人の神様のことをShichigosanと呼んだり(笑))。

評価:★★★★

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2016.02.02

The Decline and Fall of IBM: End of an American Icon?


The Decline and Fall of IBM: End of an American Icon?
(50,000語 YL:7.0)

世界有数のIT企業であるIBMの凋落ぶりを綴ったドキュメンタリーです。株価の維持を最優先事項とし、そのためには大規模なレイオフや売上の減少、顧客満足度の低下をも厭わないIBMの姿勢を批判しています。

興味深かったのは、IBMのマネジメントに何層ものレイヤができて、意思疎通や意思決定が遅くなったことに対して、著者が「官僚的で日本的」と述べていたことです(悪い意味でですね)。日本企業も、IBMの失敗から学び取らねばならないことも多そうです。

IBMの社員や元社員によるコメントも多数掲載されています。印象に残ったのは、米国から仕事をアウトソースした先の国(インドなど)のIBM従業員の言葉でした。彼らは自分達が仕事を得る反面、米国の従業員が多数解雇されている状況を好ましいとは思っていないようです。IBMはやはり米国の本社が中心なので、そこが傾いたり縮小が続いたら、オフショア先だって安全ではないと危機感を募らせています。

外からは見えない米国企業の一面を教えてくれる貴重な一冊だと思います。

評価:★★★★

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