2016.09.11

Small Steps


Small Steps
(48,074語 YL:5.5)

更生施設から出てきたArmpitは、配管工の仕事をしながら学校に通い、少しずつ生活を改善しようとしていた。その時、友人のX-Rayが、人気シンガーのコンサートチケット転売でボロ儲けを企み、Armpitにも協力をもちかける。しぶしぶながらも転売に加担したArmpitだったが、そのチケットが彼の人生を思わぬ方向に向かわせることになる…。

ルイス・サッカーのHolesの続編です。地道で穏やかに生きようとする少年の、ドラマチック過ぎる人生のイベントを描きます。主人公のArmpitは自分から動くというよりも、周りの状況に流されているだけかもしれませんが、とりあえずしっかり地に足をつけて進んでいこうという彼の姿勢は素晴らしいです。

評価:★★★

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2016.02.23

Wonder


Wonder
(73,053語 YL:5.5)

病気で生まれつき醜いAugustは学校に行かずに自宅で勉強していたが、5年生として初めて学校に行くことになった。周囲から驚かれ、疎まれる中で、少しずつ友達もできてきた。しかし親友だと思っていたJackに陰口を言われているのを聞いてしまし、Augustは大きなショックを受けてしまう…。

先天的に醜い一人の少年の学校生活を描いた物語です。容姿だとか、他人にどう思われているだとか、友達が多いとか人気があるだとか、そういうことに非常に敏感な10代前半の子供達の様子をよく描いています。どうしても目立ってしまうAugustの存在は、周囲の子供達にもいろんな感情を引き起こします。「Augustは付き合ってみるとなかなか面白い奴」ということを見抜けた子供達は、だんだんと彼の友達になっていきます。ありきたりではありますが、人を見た目で判断せずに、その人の行動とか気持ちとかに目を向けることの大切さを教えてくれます。

評価:★★★

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2016.01.17

Life After Life


Life After Life
(168,640語 YL:9.0)

ある雪の日に生まれた女の子Ursulaは、生後間もなく息を引きとってしまった。しかし彼女は全く同じ日に同じ状況で生まれ変わり、今度は生き延びる。しかし数年後に別の事故で死んでしまう。そしてまた生まれ変わり、別の人生を繰り返す。前世での「反省」を糧に、彼女が選択する「最善の人生」の結末は…?

何度も同じ状況で生まれ変わる女性の姿を描いたちょっと不思議なヒューマンドラマです。「もしあの時、別の選択をしていれば、自分の人生は大きく変わっていたかもしれない」というのは誰しもが一度は考えそうなことですが、この作品では、ちょっとした出来事や判断・選択によって人生が大きく変わる様子が、輪廻転生する女性Ursulaを通して描かれています。

Ursulaは前世の記憶をうっすらと持っているため、前回とは違う選択をするのですが、それでもなかなか幸せな結末にはたどり着けません。先の見えない人生における選択の重要性や、そんな人間をあざ笑うかのような偶然の残酷さを感じずにはいられません。戦争中のような、ほんのわずかの差が生死を分けるような場面ではなおさらです。一度きりの人生を大事に生きないといけないと感じさせてくれる一冊です。

評価:★★★★

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2015.10.11

Redeployment


Redeployment
(94,240語 YL:9.0)

戦争に関わる様々な米国人の姿を描いたオムニバスです。戦争の物語というと、前線で銃を持って戦う人々が主役である場合が多いのですが、この作品では少し別の役割を持っている人が多く出てきます。

慣習の異なるイラクの人々との交渉や、「イラクの子供達にベースボールをやらせろ」という本国からの無茶ぶりに対応する復興担当者。戦士した兵士に賞を与えるための書類を書く事務員。敵に対して侮辱的な言葉を使うことで敵を誘い出す心理作戦担当者…。個人的に一番印象に残ったのは、従軍牧師のストーリーです。常に死と隣り合わせという極限状態の兵士が精神的に病んでいく中で、彼らを救うことができない従軍牧師の苦悩は胸に刺さるものがあります。

この本では、現代の戦争における、今まであまり描かれてこなかった部分を見ることができます。「実話である」とは書いていないのですが、著者がイラクに従軍した経験や、彼が取材した関係者の実体験に基づく、真実味のあるストーリーであることは容易に想像できます。社会的にも戦争に関する議論が絶えない今日において、多くの人に読んでもらいたい本です。

評価:★★★★

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2015.07.08

The White Tiger


The White Tiger
(94,240語 YL:6.0)

「親愛なる中国の首相殿。私はインドの企業家です。今はシャンデリアのあるオフィスにいます。貧しい家に生まれました。そこからMr.Ashokの運転手として生活していました。そして今は指名手配されています。私はご主人様であるMr.Ashokを殺したのです…。」

インドの貧困層の男Balramの人生を描いたヒューマンドラマです。彼の姿を通して、インドの貧困やカーストによる差別という社会的な問題を克明に描いています。カーストによっては入ってはいけないショッピングモールがあったり、雇用主の妻が起こした交通死亡事故の肩代わりをさせられそうになったりなど、日本などではあまり考えられない理不尽な出来事がたくさん起こります。多くの人が現状を抜け出したいと思う中で、「殺人」という手段でそれを達成してしまうBalramの姿には、蓄積した恨みつらみが爆発する時の恐ろしさを感じてしまいます。

自分はインドには行ったことは無いのですが、「観光地じゃないインド」というのは、こんな姿なのかもしれないと思いながら読みました。ちなみに、本作品はThe Man Booker Prize 2008受賞作品だそうです。

評価:★★★

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2014.08.14

Dead End in Norvelt


Dead End in Norvelt
(73,684語 YL:6.0)

小さな町Norveltに住むJackは、父の指示により母が大切にしていたトウモロコシ畑を刈り取ってしまい、怒った母から外出禁止を言い渡される。Jackが外出を許されるのは、Volkerさんが新聞向けの「お悔やみ」を書くのを手伝いに行くときだけ。しかし最近、Norveltが最初にできた時の住人達が次々と亡くなっていき、Volkerさんの手伝いも忙しくなる。でも、みんな本当に自然死なのかなぁ…。

著者Jack Gantosの半自叙伝的な作品だそうです。実際に彼が子供の頃に体験したことなども織り交ぜながら書いているのだと思います。各エピソードには面白い部分もあるのですが、ストーリー展開が散漫で、物語が行き当たりばったりでフラフラと進行しているように見えます。ヒューマンドラマのようで、ミステリのようで、コメディのようにも見えるけど、そのどれでもないような、ちょっとよく分からない印象です。

2012年のNewbery賞受賞作ということなのですが、個人的には期待外れで、賞に選ばれるような作品には思えませんでした。

評価:★★

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2014.06.04

シンドラーのリスト


シンドラーのリスト

「シンドラーのリスト」の原作を読んだので、せっかくなので映画の方も見てみることにしました。

原作もインパクトの強い作品だったのですが、ほぼ全編モノトーンで繰り広げられる映像のリアリティは想像を超えていました。セットで撮影された映画というよりは、まるで記録映像を編集したドキュメンタリー映画なのではないかと思うほどです。

全編目を覆いたくなるような残酷なシーンばかりですが、目をそらすことができません。単なる気まぐれで殺戮を繰り返すSS達、おびただしい数の死体、収容所に連れていかれる人々、離れ離れになる家族、そしてアウシュビッツ強制収容所の煙突から立ち上る煙…。人間はここまで残酷になれるのかと恐ろしくなります。

しかしそんな状況に対比して、人間の繋がりの素晴らしさがとても眩しく描かれているようにも思います。シンドラーが自らの工場を去る時に、彼が助けた多くの人々に囲まれ、感謝されながらも"I could have got more."(もっとたくさん助けられたはずだ)と悲しむラストシーンはとても印象に残りました。シンドラーと彼の工場の従業員は「助けるドイツ人と助けられるユダヤ人」というよりは、「残酷で理不尽な時代を共に生き抜いた戦友」とも言えるような関係だったのではないでしょうか。

評価:★★★★

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2014.01.18

The Help


The Help
(158,012語 YL:8.0)

Aibileenは白人一家に仕える黒人メイド。彼女は雇用主の命令には従順に従うタイプであったが、一家とは別のトイレを使わされるなどの差別が重なり、次第に不満をつのらせていった。そんな中、白人のMiss Skeeterが、黒人メイドの本音を書いた本を出版したいと言って、Aibileenに協力を頼んできた。しかし、白人に逆らった黒人は暴行を受けたり、命を奪われるということが日常茶飯事に起きていた。身の危険を感じてSkeeterの協力を拒んでいたAibileenであったが、これまでに受けた不当な仕打ちを次第に打ち明け始める。そして、その動きは次第に広がっていき、町中に大きな影響を与えることになる…。

人種差別の蔓延する60年代のミシシッピにおける女性達の人生を描いた物語です。人種差別というと、「差別する白人と差別される黒人」という構図が思い浮かぶかもしれませんが、この本に出てくる関係はもっと多様で複雑です。実の親以上に黒人メイドから愛情を注がれてきた白人の子供。黒人を差別する白人と、黒人を擁護する白人の間の確執。黒人夫婦の間に生まれた「肌の白い黒人」の立場など、差別に関わる様々な人間関係が繰り広げられます。

あとがきにも書いてありますが、この物語の多くの部分が、ミシシッピで生まれ育った著者の経験と関係があるようです。そんな著者でさえ、人種差別の問題を扱った物語を書く時には、過度に描きすぎではないかとか、本当の姿を全然描ききれていないのではないかとか、ものすごく悩んだようですね。でも、作者が言いたかった「ひとりの人間として、きちんと向き合うことの大切さ」みたいなものは、十分伝わってくると思います。

評価:★★★★

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2013.12.04

Theodore Boone: Kid Lawyer


Theodore Boone: Kid Lawyer
(57,420語 YL:4.5)

弁護士の両親を持つTheoは、裁判を傍聴するのが大好き。そんな彼の現在の関心事は、街で起こった殺人事件の裁判。被告であるDuffy氏は、自宅で妻を殺害した疑いで起訴されるが、目撃者も決定的な証拠もない。そんな中、Duffy氏が犯行時間に自宅に戻ったのを目撃したという少年がTheoの前に現れる。しかし、その少年は不法移民のために、裁判で証言するのを怖がっている。彼を説得して法廷で証言させるのか、それとも決定的な証拠を知りつつもそれを出さずにDuffy氏を無罪にしてしまうのか。悩み続けるTheoの決断は…?

Theodore Booneシリーズの第1巻です。法廷ものの第一人者、John Grishamによる子供向けの法廷ストーリーです。分かりにくい法廷や裁判の用語やシステムを、Theoが分かりやすく説明してくれるので、非常に読みやすいです。また、Theo自身が友達の抱えるいろんな問題(家の差し押さえ、捕まった脱走ペットなど)に対してアドバイスをしたりする様子から、法律や裁判の様々な役割を学ぶことができます。ストーリー的には、Theoだけでは問題を解決できずに、本職の弁護士である彼の家族の助けを借りることになります。「少年弁護士が大人を相手に大活躍!」みたいなドラマチックな展開ではありませんが、逆に嘘っぽさが無いところがいいと思います。「John Grishamを原書で読んでみたい!」という人は、まずこの作品から始めてみてもいいのではないでしょうか。

評価:★★★

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2013.09.24

Heart of a Samurai


Heart of a Samurai
(45,000語 YL:4.5)

漁に出ていたManjiro達は嵐にあい、無人島に漂流する。飢えと渇きに苦しむ彼らを救ったのは、アメリカの捕鯨船Howlandの船長Whitfieldだった。Manjiroは船長とともにアメリカ本土に渡る決意をする。そこで彼が見たものは、日本とは全く異なる世界だった…。

幕末にアメリカに渡った青年、ジョン万次郎の物語です。身分の低い漁師に過ぎなかった彼が、アメリカに渡り、多くのことを学んで日本に戻ってきて侍となり、幕末の日本に大きな影響を与えるという信じられない人生を送る姿を描いています。彼の人生はまさに激動の一言ですが、いろんな問題に直面する度に、何が一番大切かを一生懸命考える姿が印象に残りました。そもそも好奇心が強く、勉強熱心だったようですね。日本語の読み書きもできないのに、船上で英語でコミュニケーションがとれるようになるなんて、ほんとうにすごいです。

作品中では文章だけでなく、幕末当時の写真やイラストなども添えられており、非常に楽しめます。万次郎本人の手による絵なども掲載されていて、興味深いですね。日本語で説明も添えられているのですが、"Half-dollar"は「ハスダラ」、"Steamboat"は「シチンホール」など、英語のカタカナ表記が面白いです。日本人が読んで楽しめる洋書ですね。ニューベリー賞受賞も納得する作品です。

評価:★★★★

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