2020.09.06

The Bromance Book Club


The Bromance Book Club
(79,605語 YL:8.0)

妻と喧嘩をして家を飛び出したメジャーリーガーのGavin。しかし妻から離婚を突きつけられてショックを受けてしまう。何とか彼女の心を取り戻したい彼は、女心を理解するために、同僚の勧めで男同士の「ロマンス本読書の会」に加わる。ロマンス本の英国貴族は、Gavinの結婚生活を救えるのか…?

メジャーリーガーのような屈強な男達が、女性向き恋愛小説を真剣に読み込むという設定がユーモラスなラブストーリーです。しまいには主人公のGavinが小説の主役の英国貴族と脳内会話を始めたりしてしまいます。本を読んでいくうちに、だんだんGavinの心境に変化が現れるのですが、これを見ると、恋愛小説に限らず本というのは我々の行動や人生に大きな影響を与えるのだなぁ、と考えさせられる作品です。まさに"You are what you read"。

評価:★★★

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2015.08.29

Sundays at Tiffany's


Sundays at Tiffany's
(48,816語 YL:6.0)

ショービジネスの世界で働くJane。彼女が子供の頃に持っていた想像上の友達(imaginary friend)であるMichelをモデルにした舞台をプロデュースして大ヒット。しかしその映画化に向けて、大物プロデューサーである母Vivienneや、舞台でMichel役を務めた俳優との衝突により、傷つき疲れ果ててしまう。そんな時、彼女の前に現れたのは、子供の頃に突然消え去ったMichelその人だった…。

ニューヨークを舞台にしたファンタジーロマンスです。「想像上の友達と恋愛する」というとちょっと一人上手っぽく聞こえますが、この作品では、その「想像上の友達」が本当に存在し、彼の視点でも物語が進んでいくというストーリー展開が非常にユニークです。子供の頃にそうだったように、大人になったJaneもMichelによって癒されていき、やがて激しい恋に落ちます。Michelと幸せな時間を過ごしながらも、「また彼は突然いなくなってしまうかも」という不安にかられているJaneの姿は、恋愛のちょっと不安定なドキドキ感をとてもよく描いていると思います。ラブストーリー的に王道、鉄板な感じでストレートに楽しめる作品です。大人向けペーパーバッグにしては英語も平易な部類に入ると思います。

評価:★★★★

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2011.07.24

Message in a Bottle


Message in a Bottle
(90,689語 YL:7.0)

ボストンで新聞にコラムを執筆しているTheresaは、休暇中に浜辺で1本の瓶を拾った。その瓶に入っていたのは、Garrettという男が書いた、妻Catherineを失った悲しみと、彼女への一途な愛情を綴った1通の手紙だった。Theresaはその手紙の差出人Garrettに興味を持ち、彼の居場所を探し出す。そして出会った二人は、互いに惹かれあうのだが…。

おなじみ、ラブストーリーの巨匠Nicholas Sparksのベストセラー作品です。

ストーリーだけみると、

(1) 離婚等で恋愛に臆病になってる男女の出会い。
(2) 急速に惹かれあってラブラブー。
(3) ある事件がきっかけでピーンチ!
(4) ハッピーであってもなくても、さわやかな結末。

という感じで、型にはまって少しオーソドックスすぎるような感じもします。

でも、「大切な人を失う悲しみと、それを乗り越えること」というテーマが作品全体を通してしっかり読者に伝わってくるところが、この作品のよいところなのでしょう。

でもやっぱりこの作品の一番の読みどころは「一途な気持ちを綴った手紙そのもの」なのではないでしょうか。自分は男性なのでよく分からないのですが、女性がGarrettの手紙を読んだら、やはりその一途な気持ちにグッとくるのではないかと想像しています。

評価:★★★

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2011.05.08

Safe Haven


Safe Haven
(90,000語 YL:6.0)

小さな港町Southportに引っ越してきたKatie。彼女は妻を亡くした男Alexと知り合い、次第に二人は惹かれあうようになる。Alexの二人の子供とも仲良くなり、幸せを感じ始めるKatie。しかし彼女は、名前を偽り、暴力的な夫Kevinから逃れている身であった。そして後に残されたKevinは、妻の居場所を探り続け、ついにはSouthportまでたどり着く…。

ラブストーリーの巨匠、Nicholas Sparksの作品です。DVな夫から逃げてきたKatieと、妻を亡くしたシングルファーザーAlexの恋愛を描きます。ただ、この二人は美男美女で性格もきちんとしていて、キャラクターとしてはちょっと面白味に欠けると思います。特にAlexの方は、頼もしくて子供にも優しくて、まさに理想の夫でパパという感じでちょっと現実味が薄いです。一方で「オレが全て正しい。世の中の奴らはみんな間違っている」と考え、Katieに愛情を持ちながら憎悪を募らせる夫Kevinの方がリアリティがありますね。もちろん、このような人物は世の中にはあまり存在して欲しくないのは確かですが。

ストーリー展開の方は、二人が出会って惹かれあって喧嘩したりして仲良くなって等の場面の他にも、サスペンス的な要素も盛り込んであり、楽しめると思います。プロットもしっかり練られている印象で、ラストもさわやかにまとめてあります。

評価:★★★

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2010.09.30

Divorced, Desperate and Dating


Divorced, Desperate and Dating
(87,000語 YL:7.0)

ミステリ作家のSueは、何物かに狙われていた。死んだネズミや「死ね」というメッセージが送られてきたり…。手口はすべて彼女自身の作品に書かれていた通りだった。彼女は彼女を守る刑事Jasonと互いに惹かれあうのだが、元夫とのひどい別れがトラウマになって、素直になれないでいた。そんな中、とうとう彼女の命を脅かす出来事が…。Jasonは、姿の見えないストーカーから、Sueを守ることができるのか…?

ミステリ・ロマンスと銘打っている作品ですが、ロマンス9割、ミステリ1割ですね。物語の半分くらいは「お互い好き同士なんだけど、過去のトラウマのためになかなか最後の一線を越えられないSueとJason」の描写で費やされているような気がします。越えちゃったら越えちゃったで、その様子の描写が続くのですが(笑)。正直、プロットとか事件の真相とかのミステリ的部分はオマケですね。

しかし、Sueと仲良くなる刑事Jasonはちょっと完璧すぎてやりすぎな感じがします。正義感と行動力があって、お年寄りや子供にも優しくて、セクシーでイケメンでおまけにサイズがExtra Large (何の話だ(笑))。あまりにも「理想の王子様」的でリアリティがないです。もうちょっと欠点があった方が、人間味があったような気がします。

評価:★★★

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2010.05.09

Snow Angels


Snow Angels
(128,000語 YL:7.0)

Graceは、Domestic Violenceに苦しむ女性達をかくまうための施設Hope Houseを営んでいる。彼女はクライアントの2人の娘を車に乗せたまま、夜の雪道で立ち往生してしまう。携帯電話の電池も切れて、助けを呼べないGraceは、女の子達を連れて吹雪の中をさまよい、あるログハウスにたどり着く。そこに住むMaxは、2年前のクリスマスに妻を失った元スキー選手だった。妻以外の女性には手を触れないと固く誓っていたMaxであったが、次第にGraceに惹かれていき…。

クリスマスに起こった奇跡を描いた4作品の短編オムニバスです。登場人物はそれぞれ家庭や恋愛、仕事や金銭など様々な問題を抱えていますが、クリスマスに起こった奇跡的な出会いや出来事によってハッピーエンドを迎えます。登場人物には牧師や警察官など、昼夜関係なく献身的に働く人達も多く、彼らが幸せになるのを見るのはとても気持ちがよい一方で、「いくらクリスマスだからと言って、全ての問題が突然奇跡的に解決するなんて、そんなにうまくいくわけないだろう」とか思ってしまいます。特に、そういう話が4本も続いてしまうと、奇跡の年末出血大バーゲンみたいな感じで、かなり食傷気味です。どんなに美味しいクリスマスケーキでも、1個で充分。一気に4個も食べたら、おなかを壊しますよ(笑)。

評価:★★

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2010.04.15

Shields of Pride


Shields of Pride
(100,000語 YL:9.0)

1173年のイギリス。道端でMonstsorrel家の一行が困っていた時に助けたのは、Lord Williamの息子のJoscelin。その後、粗暴なMonstsorrel家の主Gilesが死に、後には妻Linnetと息子Robertが残された。彼らを守るように命じられたJoscelin。最初は彼のことを財産目当てと疑っていたLinnetであったが、二人は互いに強く惹かれあうようになる。しかしLinnetには、Joscelinには決して明かせない秘密があった。そして二人の運命は、戦乱の世に巻き込まれることになる…。

中世のイギリスを舞台にした物語です。最初は歴史ドラマかと思いましたが、完全にJoscelinとLinnetのラブストーリーですね。近親者の間での憎悪が生々しく描かれています。JoscelinとRalfの兄弟関係、夫Williamと妻Agnes、父Williamと息子Ralf、そして妾のMorwennaと妻Agnesなど、様々な憎悪の関係が描かれています。男達の憎悪は権力がからんでいるものが多いですが、女同士や夫婦間の憎しみは嫉妬などの個人的な感情が多いですね。でも、どちらも「プライド」に関わる問題というのが、この作品のテーマなのでしょうか。

あと、ちょっと英語が難しいですね。mercenaryとかoublietteとか、他の作品ではあまりお目にかからない単語が多数出てきます。歴史物を読む時には、それなりの専門用語を知らないといけないのは、和書でも洋書でも一緒ですね。

評価:★★★

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2009.09.30

The Choice


The Choice
(72,600語 YL:6.0)

仲の良い友人達に囲まれ、楽しい日々を過ごしていたTravis。そして彼の隣に引っ越してきたGabby。Gabbyには大切に思っている彼氏がいたが、短い間にTravisとGabbyは強く惹かれあう。互いに求めあう二人は結婚し、幸せな生活を送る。しかし、ある事件が二人を引き裂いてしまう。その結果、Travisに残された選択肢は、Gabbyを裏切ることか、彼女の命を奪うこと。そして、最後にTravisが下した決断の結末は…。

Nicholas Sparksのラブロマンスです。幸せの絶頂と絶望的な苦悩を強いコントラストで描く手法は、"The Notebook"に似ていますね。サラサラと流れるように読める情景描写、心理描写は相変わらずいいですね。Gabbyに対する愛情と罪悪感で苦悩するTravisの姿に涙する人も多いと思います。ただ、ちょっとストーリーがストレートすぎるのが惜しいですね。前半はTravisとGabbyの両方の立場からの描写があるのですが、後半はストーリーの都合上、Travisの視点からしか描かれていないので、物語の幅が少し狭まってしまっている印象を受けました。

評価:★★★

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2009.07.15

Peony in Love


Peony in Love
(105,000語 YL:9.0)

王朝が明から清へと移った17世紀の激動の中国。外界から隔離されて育てられた16歳のPeonyは、彼女の家に招かれていた詩人のRenに恋をする。しかしPeonyには親に決められた婚約者がいた。Renへの募る想いを、歌劇"The Peony Pavilion"の本の余白に書きつづるPeonyは寝食を忘れ、次第にやつれていった。そして、婚約者が実はRenだと知った幸せの絶頂の直後、彼女は息をひきとってしまう…。

女性達の生死を超えた愛と、詩文への情熱を描いた物語です。主人公のPeonyは、最初の方は「Renがスキスキ」状態で、箱入りお嬢様のナヨナヨした恋愛物語かと思いましたが、意外や意外、彼女は死後に外の世界に出て、多くの真実を知ることになります。革命の最中での残虐な行為や、美談の裏に隠された醜い真実、そして死者にすら向けられる嫉妬や憎悪…。さらに適切に埋葬されずに幽霊となったPeonyは、苦難の日々を送ります。そんな中でも彼女はRenを愛し続け、彼を助けます。

夫を立てて自分はおとなしくしているのが良き妻とされた時代においても、多くの女性達が自分たちの気持ちを表そうと、文章を綴ったようですね。それこそ「命を削ってまで」筆を取り続ける彼女達の姿には、圧倒されるものがあります。

第一印象とは裏腹に、重厚でとても読みごたえのある作品でした。ちなみに、この物語の主人公Peonyは、実在した人物だそうです。

評価:★★★★

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2009.04.11

The Time Traveler's Wife


The Time Traveler's Wife
(155,255語 YL:9.0)

Henryは遺伝的な要因により、自分の意思にかかわらずタイムトラベルをしてしまう。36歳のHenryは過去に戻って、6歳のClareと出会う。これがClareにとって、Henryとの初めての出会いであった。一方、Henryは28歳の時に初めて20歳のClareに出会い、「私は小さい頃からあなたを知っている」と言われる。そして彼らは結婚し、2人の生活が始まる…。

時間を行き来するHenryと、その妻Clareの物語です。「タイムトラベル」と言うと、SFな感じもしますが、この物語は完全にラブストーリーですね。肝心な時に突然いなくなって、どんな危険な目にあっているか、いつ戻ってくるか分からないHenryを信じて待ち続ける一途なClareには心を打たれます。

当然、2人の結婚生活には困難が多いです。もちろん、突然全く違う場所、違う時間に移動してしまうことによる物理的な危険もあるのですが、それよりも精神的な苦痛が大きいですね。例えば、未来に起こる悲劇を知ってしまうこと。そしてそれを止められないという絶望。さらに、過去に起こった悲劇を何度も目撃してしまうこと。その一方、未来が見えることで、絶望の中に希望を見出すこともあります。様々な出来事の中で、もがきながらも共に歩み続ける2人の感情の描写が見事です。

過去と未来、生と死、悲しみと喜び、そして絶望と希望が織りなす、切なくも美しいラブストーリーです。涙腺の緩い方は、ハンカチをお忘れなく。

評価:★★★★

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