2017.09.11

The Diary of a Young Girl


The Diary of a Young Girl
(82,762語 YL:6.0)

第二次大戦中に、ナチスから逃れてオランダで隠れて暮らしたAnne Frankの日記です。いつ捕まえられてもおかしくない状況で、息を殺して暮らしながらも、恋愛の喜びや、事態の好転への希望なども綴っています。Anneのように多感で才能もある若い女性が、もし自由に世界を飛び回れたら、どんなに素晴らしい人生が送れたのだろうと考えずにはいられません。突如続きが無くなった日記を読むと、本当に胸が痛みます。生前、彼女はジャーナリストか作家になって、自分の作品が多くの人に読まれることを望んでいました。死後に日記が出版されることは、彼女が望んだかたちでは無かったと思います。ですが、彼女の言葉は、きっと彼女が生前に想像したよりも多くの人達に、大きな影響を与え続けているのだと思います。

人種や信条などでの衝突が深まる現代において、もう一度注目されてほしい作品です。

評価:★★★★★

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2016.04.21

My Guantanamo Diary: The Detainees and the Stories They Told Me


My Guantanamo Diary: The Detainees and the Stories They Told Me
(99,200語 YL:8.0)

アフガニスタンやイラクで米国軍に逮捕されたテロ容疑者を収容していると言われるキューバのグアンタナモ収容所。そこを弁護士の通訳として訪れ、被収容者と直接会話をした著者によるドキュメンタリーです。

アフガン人の両親を持つ米国人女性である著者は、収容所を訪れ、多くの被収容者と言葉を交わします。彼らの多くが、不当な理由で逮捕され、裁判も受けられずに長期間拘束され、非人道的な拷問を受けたと証言しています。彼らの証言が本当かどうかは分かりませんが、80歳にもなって自力で歩くことも困難な老人をも「米国に対する脅威だ」として、拘束し続けるという米国軍の姿勢には多くの疑問を感じざるを得ません。

また、米国人とアフガン人も、単純な敵味方という関係ではなく、非常に複雑であることが読み取れます。収容所にテロ容疑者として収容され、数年後に解放されたアフガン人の男性は、次のように語っています。

「私は米国人を憎んでいない。本当に悪いのは、私のことをテロリストだと言って米国に捕まえさせた、(自分とは敵対関係にある)アフガン人だ。嘘を見抜けず、自分達でろくに真相を調査しようとしない米国人は、ただ愚かだっただけだ。」

この本は、戦場以外でも今なお続く「戦争の悲劇」を生々しく描写します。戦争やテロへの恐怖という極限状態において、いかに人間が愚かに、残酷になれるのかをあらためて教えてくれる一冊です。

評価:★★★★★

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2016.02.02

The Decline and Fall of IBM: End of an American Icon?


The Decline and Fall of IBM: End of an American Icon?
(50,000語 YL:7.0)

世界有数のIT企業であるIBMの凋落ぶりを綴ったドキュメンタリーです。株価の維持を最優先事項とし、そのためには大規模なレイオフや売上の減少、顧客満足度の低下をも厭わないIBMの姿勢を批判しています。

興味深かったのは、IBMのマネジメントに何層ものレイヤができて、意思疎通や意思決定が遅くなったことに対して、著者が「官僚的で日本的」と述べていたことです(悪い意味でですね)。日本企業も、IBMの失敗から学び取らねばならないことも多そうです。

IBMの社員や元社員によるコメントも多数掲載されています。印象に残ったのは、米国から仕事をアウトソースした先の国(インドなど)のIBM従業員の言葉でした。彼らは自分達が仕事を得る反面、米国の従業員が多数解雇されている状況を好ましいとは思っていないようです。IBMはやはり米国の本社が中心なので、そこが傾いたり縮小が続いたら、オフショア先だって安全ではないと危機感を募らせています。

外からは見えない米国企業の一面を教えてくれる貴重な一冊だと思います。

評価:★★★★

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2015.10.20

Jean's Way


Jean's Way
(46,500語 YL:6.0)

癌に侵され、余命が短いことを宣告された妻Jeanと、彼女を支える夫Derek(著者)の姿を描いたドキュメンタリーです。Jeanは苦しみながら生きるよりも、自分らしく死にたいと考え、時が来たら自分の命を絶つように夫Derekに依頼します。妻は愛する人を残して死ぬ、夫は愛する人の命を絶たなければいけないというつらい境遇の中で、夫婦が互いに相手のことを思いながら、残された短い日々を過ごす姿には心を打たれます。

安楽死という選択が正しかったのかどうかは、部外者からはとても判断はできないと思いますが、夫婦で決めた決断には、二人とも後悔は無かったのだと思います。

日々を生きることの大切さを、あらためて感じさせてくれる作品です。

評価:★★★★

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2014.12.20

Jリーグ再建計画


Jリーグ再建計画

来年度から2ステージ制となるJリーグですが、何故そのような改革が必要になったのかなど、Jリーグが抱える様々な問題とそれに対する取り組みについて述べた本です。

データによると、現在Jリーグは多くの人達にとって魅力的なコンテンツではないというのが現状だそうです。スポンサーがつかない、地上波で放送されない、全試合放送しているスカパーは赤字…。そして優秀な選手や莫大な放映権料、そしてテレビのスポーツニュースのサッカー枠は全て欧州主要リーグに持っていかれてしまうという構造。そのような構造から脱却するために「2ステージ制にして、優勝が決まる試合の頻度を増やす」ことにしたということだそうです。苦渋の決断だったと思うのですが、Jリーグはまだできてから20年。まだまだ人々の興味(つまり、お金や時間)を集める努力をし続けないと、持続していけない構造であるということを教えてくれます。

その中で、アジアの国々のクラブとの提携というアプローチは興味深いですね。東南アジアなどの海外で、Jリーグというコンテンツが今後どれだけ価値を高められるかという部分は興味深いです。個人的には、Jリーグクラブへの外資参入を認めてもいいんじゃないかな、と思います。突然海外の大富豪がオーナーになって、生え抜き選手をバッサリ切ってスター選手ばかり集めてくるようなチームが出てくるかもしれませんが、それでも大きな話題になるのではないでしょうか。もっとも、イングランドのプレミアリーグの担当者に成功の秘訣を聞いたら「外資開放したこと」と答え、ドイツのブンデスリーガ担当者に同様の質問をしたら「外資開放をしなかったこと」と答えたそうで…。スポーツビジネスの世界は難しそうですね(笑)。

評価:★★★★

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2014.09.11

Creating Innovators: The Making of Young People Who Will Change the World


Creating Innovators: The Making of Young People Who Will Change the World
(87,000語 YL:7.0)

イノベーションを起こしてきた人達の境遇を調査した本です。オフショアなどの労働力シフトに負けない経済を作り出すためには、イノベーションによる経済、社会の発展が必要不可欠であるとし、イノベーションを起こす人の「育て方」を探るのが本書の目的です。もちろんイノベーターの姿も多種多様なのですが、最大公約数的な要素として、以下のようなものを挙げています。

(1) 3つのP

Play: 遊び、楽しむ段階
Passion: 真剣になり、夢中になる段階
Purpose: 目的を持って行動する段階

何か世界を変える大きな目標(purpose)を持つためには、自由に遊び(play)、試行錯誤していくことが重要であるということらしいです。

(2) イノベーションに重要な3要素

Expertise: 専門知識
Motivation: 動機
Creative thinking: 独創的な考え方

確かに、このうちのどれが欠けてもイノベーションは起こりにくくなるように思います。例えば、難問に立ち向かう情熱(motivation)や知識(expertise)が十分にあっても、考え方が凡庸だと、問題解決につながりにくいように見えます。さらに付け加えると、専門知識は複数領域(interdisciplinary)であること、動機は外から与えられるものではなく、自分の内から湧き出る動機(internal motivation)が重要であるとしています。

そして、クリエイティブな人を育てるためには、本や座学で知識を叩き込むのではなく小さいころから失敗を許容し、様々なトライを積み重ね、行動によって知識や経験を会得するという姿勢を持たせる教育環境が重要であると説いています。この本に出てくるクリエイターの両親や先生たちも、人を育てるのに様々な苦労をしています。リスクも負います。それでも、多くの人達が「自分達が20世紀に受けてきた教育方法を、21世紀を生きる子供達にそのまま当てはめるのは間違っている」と感じているようです。

教育に携わる人達には是非一読してほしい書籍です。面接やペーパーテストで良い点数を取れる人間ではなく、社会に出て本当に活躍できる人を育てるためのヒントになる要素がいろいろ詰まっている一冊です。

評価:★★★★

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2014.08.17

セーラが町にやってきた


セーラが町にやってきた

長野県の小布施町で様々な改革を成し遂げたアメリカ人女性、セーラ・マリ・カミングスさんの活躍を描いたノンフィクションです。セーラは国際北斎会議の誘致や新酒の開発など、様々な活動で小布施を盛り立てていきます。セーラが来る以前から、小布施では市村家の人々を中心に、修景事業などの改革を続けていたのですが、セーラが来ることによってさらに加速したような感じですね。素晴らしいアイディアを実行するのに、タイミングの良いも悪いもない。ありもしない「いいタイミング」を待たずに、直ちに行動するのをよしとするセーラのスピード感には関心させられます。

その猪突猛進な仕事ぶりから「女カルロス・ゴーン」とも評されるセーラさんですが、周囲に無茶なお願いをしては、しまいに相手をその気にさせて様々な改革を実現させるやり方は、むしろスティーブ・ジョブズのReality Distortion fieldに通じるものがあるような気がします。ジョブズは新しいものを作るために既存の概念を次々と破壊していくイメージがありますが、セーラは日本の古き良きものを守るために必要な改革を行うという、正反対のイメージを持ちました。でも二人とも東洋の文化の素晴らしさに感銘を受けていたということで、根底に流れるフィーリングには共通したものがあったのかもしれませんね。

評価:★★★★

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2014.06.22

No one's perfect


No one's perfect
(49,202語 YL:6.0)

テレビや教育、作家活動など、多方面で活躍されている乙武洋匡さんのベストセラー「五体不満足」の英訳版です。

もともとが日本語の作品だけあって、英語版も非常に読みやすいです。内容としては乙武さんの幼少期から大学時代までを綴っているのですが、やはり印象に残るのは乙武さんのチャレンジ精神ですね。見かけによらず(?)スポーツマンな乙武さんは、小学校では野球やドッチボールを楽しんで、中学でバスケ部、高校でアメフト部というまさに「バリバリ体育会系」な10代を過ごされています。友達も多くて、早稲田に入れる程頭も良くて、英語のスピーチコンテストで優勝してしまうなどいろんな幸せが沢山書かれているので、著者が乙武さんじゃなかったら、単なる「リア充自慢」にも読めなくもないですね(笑)。でも、彼の旺盛なチャレンジ精神を目の当たりにすると、周りの人もついつい応援したくなってしまうのではないでしょうか。彼が人々との出会いに恵まれたとするならば、それは単純に幸運であったということではなく、彼のポジティブな姿勢が、多くのポジティブな人達を引き付けてきたのだと思います。

彼がいろんな出来事に直面していくうちに、「他の子と同じことができること」「他の子がやっていないことができること」「自分にしかできないことができること」など、いろんなことを考えます。読んでいる側も、障害や偏見、差別、先入観のようなものについて考えさせられます。その点、残酷な一方で先入観も少ない子供達の意見はとても印象的でしたね。乙武さんがいるのが当たり前になった小学校のクラスでは、彼が必至になってプールで25m泳いだとしても「頑張ったのは偉いと思うけど、別に涙を流して感動する話でもない」というリアクションでした。クラスメートは彼を「障害者」というカテゴリーでくくって、そのフィルターを通して見るのではなく、彼らにとって乙武さんは「泳ぐのがちょっと苦手な普通の友達」なんでしょうね。

かなり前に出版された作品ですが、古さは全然感じませんでした。ベストセラーになるのもうなずける作品です。

評価:★★★★★

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2014.06.01

Schindler's List


Schindler's List
(134,710語 YL:9.0)

第二次世界大戦下において、ドイツの占領下にあったポーランドで、1,300人ものユダヤ人の命を救ったドイツ人Oskar Schindler氏の活動を綴ったドキュメンタリーです。先日ポーランドでアウシュビッツ強制収容所を見てきた関係もあり、読んでみることにしました。

Schindler氏は実業家であったということで、始めは自分のビジネスのために従業員を守りたかっただけなのかと思いましたが、やはりそうではなかったようですね。彼自身も何度も逮捕され、また即座に命を奪われてもおかしくないような場面もあります。一人のユダヤ人を救うために多くの私財を投じることも少なくなく、ビジネスのためにやっていたのであれば、絶対に割が合いません。

彼の戦い方は様々ですが、ナチスの将校などに賄賂を贈ったりして、彼らにSchindler氏を生かしておくことが利益になると思わせるなど、人心を掌握するというのが主な方法です。他にはわざと粗悪な弾丸を作って人を殺せなくするなどというのもあります。ですが、根底にあるシンプルな法則は1つです。それは「一人でも多くの命を救うこと」。そのためにはあらゆる労力、出費、危険を惜しまないという真っ直ぐな姿勢にはただ驚くばかりです。しかも、終戦が近づき収容所のユダヤ人にも解放の時が迫ってきていても「私怨や復讐心から身勝手な行動をとるべきではない」と彼らを諭しています。彼はユダヤ人の味方で、ドイツを敵にしたのではなく、彼にとっては、ユダヤ人もドイツ人も、どちらの命も同じ重さであったのだと思います。

なお、英語のレベルは非常に高くて難解です。時折混ざるドイツ語はある程度意味が想像できるものもありますが、ほとんどは分かりません。また、様々な登場人物の証言をもとに構成されていることもあり、ストーリーの流れをつかむのも難しいです。個人的には理解度は5割くらいかもしれません。自分がこれまで読んできた洋書の中でも1、2を争う難解さの作品だったと思います。それでも、一度は読んでおくべき作品であると思いました。

評価:★★★★

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2013.01.21

The Willpower Instinct


The Willpower Instinct
(77,000語 YL:8.0)

意志の力(willpower)をいかに保ち、制御していくかということについて述べた本です。単なるメンタルやノウハウの本とは違い、動物や人間に対して行った実験の結果などを示しながら、我々人間の行動パターンを解き明かし、どのようなことに注意すべきかを科学的な側面から示唆してくれます。

例えば、何かの依存症(アルコールとか、ギャンブルとか、チョコレートとか、Facebookとか)になっている時は、「いいことがあるかもしれない」と我々に思わせるドーパミンが大きく作用しており、実際に良いことが無かったとしても、同じことを繰り返さずにはいられないのだそうです。だから、ギャンブルにはまっている人なんかは、「大当たりした経験が忘れられない」のではなく、ドーパミンによって感じる「今度こそ大当たりするかもしれないというドキドキ感」が忘れられないのでしょうね。

我々人間は意志薄弱で、目の前の誘惑に弱いのですが、これだって進化の過程で「目の前の食い物を逃す奴は生き残れない」という自然の摂理の結果なのだそうです。ただ、その摂理を飽食の現代社会に当てはめてしまうと、肥満への道まっしぐら。

意志が折れそうになった時の具体策などもいろいろ書いてありますが、「己を知る」ということが基本のようですね。自分はどんな時に弱くなるのか。ストレスがかかった時?周りに流される時?「自分にご褒美」とか言っちゃう時?そしてそれらの時に、自分の心や体に出てくる変化を感じ取り、時にはそれを受け入れたり、受け流したりしながら、少しずつ自分を鍛えていくということと理解しました。

章立ても分かりやすく、各章の最後にまとめも書いてあるので、一度読み通したら、あとは時々まとめだけ読み返してもいいかもしれません。

「この本を読んで人生が変わる」とは言わないまでも、自分に対する見方や対応の仕方が少し変わりそうな気がします。「優柔不断な自分が嫌でしょうがない」という人から、「俺様は絶対曲がらない鋼の意思を持っている」という自信満々の人まで、幅広く読んでほしい一冊です。何かしら発見があると思いますよ。

日本語版も出ていて、ベストセラーになっているようなので、こちらも是非。

評価:★★★★★

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